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豊富にある味噌の種類

今回から4回、「味噌」をテーマにお話ししたいと思います。 味噌は、みそ汁に始まり、魚や肉の味噌漬け、味噌焼き等々日本人の食卓に味噌を使った献立が上がらないことはないくらい身近にあるものです。しかし、身近にありながらとても奥深い発酵食品です。材料はとてもシンプルなのですが、熟成期間や材料の一部を変えることで種類がこんなにも豊富になるのです。また、育まれてきた郷土文化によって味の違いもあり食べ比べをしたくなります。そんな奥深い味噌について、1回目の今回はその種類をまとめてお伝えします。 私は発酵の勉強するまで、味噌にこんなに種類があることを知りませんでした。みなさんはこの中の何種類を味わったことがありますか?味の想像をしながら分類を楽しんでみるのも面白いです。 味噌は、原料による分類、味による分類、色による分類をすることができます。原料による分類は、米味噌、麦味噌、豆味噌の3種類に分けられます。米味噌は、大豆と米麹が主な原料となります。これが最も一般的で、日本全国の味噌流通の9割を占めています。麦味噌は大豆と麦麹が原料となっています。主に山口県、四国地方の一部、九州地方でよく使われています。豆味噌は大豆と豆麹が原料になっています。豆味噌は岐阜県、愛知県、三重県の東海三県で好まれています。 味による分類は、甘味噌、甘口味噌、辛味噌と分けられますが、これは塩分量と麹の量で決まります。 色による分類では、白味噌、淡味噌、赤味噌と分けられますが、これは熟成期間により左右されます。 具体的に味噌の種類をあげてみると、例えば信州味噌。一番馴染みのある名前の味噌ではないでしょうか。全国シェア率は実に80%を超えています。これは米味噌の代表です。 仙台味噌は同じく米味噌ですが、熟成期間が信州味噌よりも長いため、塩分濃度が高くなっています。 また、関東地方では同じ米味噌でも江戸甘味噌があります。米麹の量が多く、塩分濃度が低いため、名前の通り、甘味が特徴で熟成期間が短く、長期保存は難しいです。 関西では同じ米味噌でも塩分濃度の低い白味噌(西京味噌とも呼ばれます)があります。こちらは塩分濃度が低く、米麹の量が多いため甘味が強いことが特徴で、甘味噌の一種です。 豆味噌の代表は愛知県岡崎市の八丁村で作られた八丁味噌が有名です。熟成期間がとても長く、味噌の色は黒に近いのが特徴です。 麦味噌は白っぽ

ぬか床のお手入れ方法

 ぬか漬けについては、今回が最終回になります。 ちょうど1年前の9月の投稿でぬか床の基本レシピを紹介しました。 ぬか床は人にとって有益な菌がたくさんいます。ということはぬか床は生きています。温度や水、酸素の量などで、ぬか床の様子は絶え間なく変化しています。やってみたけれども、うまくいかなかったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はぬか床を成功させるコツについてお伝えします。 ぬか床は常温で管理する方が、菌の活動が活発になります。しかしながら、表面がかびてしまったり、野菜から出る水分量が多すぎてセメダイン臭が出てしまったりということもあります。 ぬか床のお手入れに大切なことは、①毎日かき混ぜること、②余分な水分を取り除くこと、③塩分濃度を11~13%程度に保つことです。 この3つに気を付ければ常温で十分管理できます。難しい場合には、野菜を漬けるのに少し時間はかかりますが、冷蔵庫に置くほうが簡単に管理できます。特に夏場の暑い時期は冷蔵庫の方が管理しやすくなります。 そして、気を付けたいのは、ぬかを足すときです。ぬかを足しただけでは塩分の濃度が変わってしまいます。ぬかを足すときにも常に塩分濃度に気を付けて、塩も一緒に足すようにしましょう。 ぬか床を何日もかき混ぜるのを忘れてしまって、恐る恐る開けると一面に白いカビのようなものが生えていて、ギョッとした!という経験のある方も多いのではないでしょうか。これはカビではなく、産膜酵母と言われる酵母です。食べたとしても身体に害はありません。しかし、ぬか床の風味を落としてしまうので、その部分を取り除いくことをお勧めします。そして、新しいぬかと塩を、取り除いた分くらい足して、毎日かき混ぜると元の状態に戻ります。元の状態に戻ったらまた野菜を漬けることができます。産膜酵母ができたからと言ってすべてのぬかを捨てなくても大丈夫です。 9月になりましたが、まだまだ地物の夏野菜が手に入ります。ぬか漬けで腸内フローラを整えて暑さを乗り切りましょう!

日本人の腸内環境を整えるルーキー、ぬか漬けの中の酪酸菌!

 ぬか漬けの秘密についての第3回目の今回は、「酪酸菌」についてです。 酪酸菌は細菌の一種です。酪酸菌は米ぬかに多く生息していると言われています。まさにぬか床となる米ぬかです。酪酸菌は酪酸や酢酸を作り出しますが、これらは腸の中の悪玉菌を抑制する働きがあります。酪酸菌により悪玉菌が抑制されることで、善玉菌が済みやすい環境になるのです。 細菌は一般的に塩分に弱いと考えられていますが、この酪酸菌は高濃度の塩分でも生息、繁殖することができます。ちなみにぬか漬けの塩分濃度は一般的に9%~12%くらいと言われています。塩分濃度が高すぎると、酪酸菌の動きは鈍くなります。 日本の発酵物の中では、酪酸菌は現在米ぬかでしか生息が確認されていません。ぬか漬けは熱を加えずに料理されますので、酪酸菌を摂取するのには絶好の条件です。 ですので、日本人の体の中、腸内常在菌として酪酸菌が存在している可能性は高いと言われています。 ぬか漬けを毎朝食べて、腸活をしたくなってきませんか。

ぬか漬けの中の酵母

 今回は、ぬか漬けのお話の第2弾!「酵母」についてお伝えします。 「酵母」というとパンを焼く時に使う酵母を思い出される方も多いと思います。 「酵母」とは真菌の一種で、糖を分解して二酸化炭素とエタノールを産出します。だからパンを焼く時に生地を膨らますのに使われるんですね。また、お酒のアルコール発酵にも欠かせない酵母。アルコールが排出されることにより、お酒のアルコール度数が上がっていきます。糖を分解してアルコールが産出されるため、アルコール度数は糖の量に比例します。 「酵母」の特徴として、酸素がある環境でも、酸素がない環境でも活動します。しかし、酸素がある環境の方が増殖しますので、日本酒造りでは仕込み中に酸素を取り入れる作業(櫂入れ)を行い、「酵母」を増殖させるそうです。逆にパンはアルコール発酵してしまわないように、生地から空気(酸素)を抜く作業をするそうです。 また菌は塩気を嫌いますが、この「酵母」は塩分濃度が高くても生息、繁殖できます。ぬか漬けの塩分濃度は一般的に約9~12%もありますが、酵母はしっかり働いています。 このように、人は紀元前の昔からパンやビールなどをつくるために「酵母」を上手に活用してきました。ぬか漬けも奈良時代にはあったのではないかと言われています。こんなに古くから人とのお付き合いのある、人にとって有用な菌だったんですね。 次回は「酪酸菌」についてお伝えします。